M×0の世界でズブリ、その2(三国 久美睡姦)
「――という噂があるんだ」
「うわぁ、怖~い」
ヒロイン3人組は何やら、新しく噂され始めた怪談話で持ち切りだった。
ある場所を歩いているとボーとしていないにも関わらず時間が跳んでいたり、身体の何処かに違和感を覚えたりするんだそうな。
良く聞いてみれば、そこは俺が魔法の練習に使っている場所だった。
色んな魔法を試している時に、効果を確かめる際に思考を停止させられれば本人は時間が飛んだと感じるだろう。
確証を得る為に触ったりしているのも違和感の原因か。
最初こそ好き勝手に犯しても何とでもなる『記憶を弄る魔法』を探していたのだが見つからなかった。
恐らくは教師専用と言う感じになっているのではないだろうかと憶測を立てている。
考えても見れば魔法を覚えたばかりであったり、使い始めて3年やそこらの生徒が他人の記憶を自由に弄られるのは確かにマズイ。
思考を数秒ほど停止させるのが、黙認の限界なのかもしれない。
魔法に関しては他にも選択肢が想像の分だけあるので、記憶に関する物を諦めて他に使えそうな物を色々と試していた。
いつも同じ場所で実験していたのが悪かったのか、湧き出てきたのが今話している怪談話だ。
噂を仕入れてきたのは、実際の被害者でもある深千夜。
久美はそんな物は気の所為だの在っても殴ると息巻いているが、愛花は普通に怖がっていた。
「――でね、今日帰りに行って見ようと思うんだ」
「えぇ、怖いよ」
「大丈夫だよ愛花、私が守ってあげるから!」
「うぅ~ん……」
いくら大丈夫と豪語しても愛花自身が理解出来ない物である上に、潜在的に怪現象が怖い物と思い込んでいる所為で好い回答を得られない。
そこで目を付けられたのが、近くで聞き耳を立てていた俺だった。
「ねぇ、愛花が怖がってるし一緒に来ない?」
「えっ、俺?」
「そう、いくら久美が強いからって男の手も借りた方が確実かなと思って、ねっ、愛花?」
「そうだね、それなら少しは安心……かな?」
「何よそれぇ、私じゃ不満だっての?」
「あはは、でも本当に何かあっても、あのビームで退治してくれるんじゃないかと思って……」
「あぁ~……」
「……あのビームは私でも防げない」
俺が魔法を初めて使った場面を思い浮かべて、何処か遠い目になる3人。
「でも、今は攻撃魔法を使っても前みたいな強力な物は出せないぞ」
「あれ、そうなの?」
「柊先生を中心にした教師陣のお陰で普通に威力になったんだよ」
「あぁ、残念……」
当てにしていた魔法が出ないと知った深千夜が深く落ち込んだ。
その表情を見た愛花は、受けなくても良い罪悪感を胸に抱く。
「……行くだけなら行ってみようかな?」
「えっ、行ってくれるの愛花!?」
「うん、4人も居れば何があっても大丈夫そうだし……」
「よし、そうと決まれば今日の放課後に早速行ってみよう!」
「おぅ!」
俺も付いていく事を条件に、ヒロイン3人一緒に怪奇スポットへ行く事となった。
明らかに久美が一番強い筈でも、男が居れば愛花と同じ様に精神的な安心感を得るのだろう。
そして、深千夜だけが待ちに待った放課後、帰り支度もそこそこに目的の恐怖スポットの手前まで移動する。
「……この先が、今噂になっている怪奇スポット」
「普通だね」
「何か暗いオーラが漂ってるのかと思ってた」
俺達の目に前にあるのは至って普通の廊下。
久美の言った様なオーラも無ければ、怪奇っぽい雰囲気の欠片も無い。
「……行くのは良いけど、全員で行くのか?」
「えっ、皆で行くんでしょ?」
「じゃないと怖いしねぇ?」
3人揃って何を言っているのかと言いそうな顔で見てくる。
未だ不安がる愛花を心配して、久美が改めて俺が居る理由を確認してきた。
「愛花も、皆で行くって条件で来たし……」
「いや、怪奇って1人か2人位の時しか遭遇しないイメージを持っているからさ……」
そもそも、1人か2人位でないと身体が持たない。
「う~ん、そうかも……」
「ミ、ミッチョン!?」
「そんな事言って、本当は愛花とでも2人きりになりたいんじゃないの?」
「そんな事になったら、柊先生に何を言われるか分からないから、三国か乾の2択でお願い」
嫌らしい笑みを湛えた久美は、俺の答えを聞いて微妙な表情へと変わった。
あの教師なら何か遣りかねないと知っている所為で、否定の言葉が出ない。
しかし、俺の隠れた希望は叶えられる事はなく、愛花の事を思って結局は全員で行く事になる。
「何も無かったら、後で深千夜と私だけで行ってみるから、今は皆で良いんじゃないの?」
その結論はマズイが、どうあってもこの決定は覆りそうに無かった。
こうなってしまっては、予め魔法を使っておく必要が出てくる。
どんな魔法を使うにも、発動キーとも言える魔法の名前を叫ぶのが必要だ。
この絶対の条件が在る限りは、ヒロイン3人衆に気付かれずに悪戯出来ない。
仕方が無いので、中座させて貰う。
「その前にちょっとトイレ」
「それぐらい我慢しなさいよ」
「万が一、漏らしたら格好悪いし……」
「あっ、私も行って来る!」
「愛花もなの?」
「うん」
「はぁ、早めに行っておいで」
「ごめんね」
なぜか愛花と連れションの形になったが、当然ながら男女別れてトイレに入った。
これで魔法を予約しておく事が出来る。
魔法はカードを同じ媒体に同化させていれば、一度に数個使えるのは確認済みだ。
手から出る物を、指ごとで分けて使ったのは爽快だった。
だが、使う魔法を登録しておかないと行けない上に、入れられる数にも上限もある。
怪奇スポットになる位の実験を繰り返し、目に付く物は試し終わったので『いざ、エロスを!』と言う所に誘われたので碌な物が入っていない。
俺がしている事を悟られない様に、目を閉じている状態で発した声を周囲に聞こえなくする『妖精の囁き(フェアリーボイス)』を使っておき、後は様子を見ながらで良いか。
途中で何か良い案が浮かんで来るかもしれない。
早く行かないと、大をしているとも取られかねないし……
そして、深千夜達が待っている場所に戻るも、愛花がまだ居なかった。
「早かったね」
「まぁ、男だからね」
「む~、早く戻って来てくれないと誰か来ちゃうかも知れないのに!」
「まぁまぁ、深千夜、落ち着いて」
2人でも姦しい会話を聞きながら、若干の手持ち無沙汰になってしまった。
少しした後に愛花が息を切らせつつ合流すると、いよいよ怪奇スポットの範囲へ入る
周りを警戒しながら進んで行くが、原因が俺である以上は当然何も起こらない。
「…………、何も起こらないね」
「はぁ、そうだねぇ」
辺りを見回している3人を尻目に、目を閉じて言葉を発した。
「『蜃気楼の手(インビジー・ハンド)』」
「……やっぱり、人数が多かったのかな?」
『蜃気楼の手(インビジー・ハンド)』は幻想の手を作り出し、本物の手が何処に在るか分からなくする魔法。
いくら腕を振り回しても周りからは普通にしている様に見える物で、要は痴漢し放題。
朝に入れたばかりで、普通の生徒が使った時の効果は知っているが俺が使った場合の効果はまだ分からない。
効果が下がる事は無いと言うのは実証済みだから、少なくとも疑われる事は無いだろうと高をくくって目の前にあった尻に手を伸ばす。
「っ、ん?」
「何かあった?」
「ちょっと、久美止めてよぉ!」
怪奇スポットと言われる場所で、おかしな反応を見せられた愛花は堪った物ではない。
触られた久美は違和感で少し声を出したものの、具体的に何が起こったかは分からないようだ。
何かを探るように周りを見た後、後ろに居る俺へと目を向けた。
「何か変な感じがした?」
「……いや、何も感じないけど」
「いや~!」
「やっぱり何かあるのね……」
短いスカートに隠された久美の尻は、格闘技をやっているお陰で柔らかさの中にある張りが強い。
他の3人には見えていなくても、手の動きは痴漢その物。
片尻全体を包む位に開かれた掌で大胆に揉む。
傍目から見れば勝手に擦り上がって行くスカートは恐怖するだろう。
しかし、人と言う生き物は何か不可解な事があれば、目線は上に向けられる。
いくらスカートが捲られても、その事は本人を含めて気が付かない。
「……何か変な感じがする」
「えぇー、もう帰ろうよ!」
「……うん、移動した方が良いかも?」
深千夜の判断で移動する事になったが、このまま行かれては来た意味が無い。
痴漢だけでは興奮が溜まる一方なので、魔法を追加する為に目を閉じる。
「『お先真っ暗』」
「ちょっ――」
「えっ!?」
「く、久美!?」
そして、久美は意識が無くなり崩れ落ちた。
突然の事に慌てふためく愛花と深千夜に、表面上はうろたえる俺。
『お先真っ暗』とは視界をサングラス程度に暗くする魔法……の筈だが、俺の増幅能力で意識まで暗くなった。
触っている所為で、ダイレクトに久美へ効果が流れ込んだのかもしれない。
慌てて身体を支える風を装い、ドサクサに紛れて胸を揉んだ。
ブラに包まれていても、柔らかさを存分に感じ取れる。
「久美、久美!」
「早く保健の先生を呼んで来てくれ!」
「分かった、行くよ、愛花!」
「うん!」
本当なら俺が背負って保健室に行く方が良いのは、少し考えれば分かる事。
だが、パニックになった思考を利用して、この場から立ち去らせる。
俺達が居る区域は普段も生徒の往来が極端に少ない上、噂で大抵の生徒が避けて通る廊下になっている。
お陰で人が通りかかる心配をする必要が無い。
走り去った愛花達は、途中に誰かと鉢合わせる事無く保健室へ直行出来る筈。
どんなに速く移動すると見積もっても、片道8分程だろうか。
往復で16分でも途中で移動する為の魔法を使う可能性も考慮して、10分程度で目的を済ませなければならない。
走る足音が完全に聞こえなくなったのを確認してから、『蜃気楼の手(インビジー・ハンド)』だけを解除。
素早く上半身の制服を脱がせ、服の上からでも揺れを押さえられない巨乳を曝け出す。
「おぉ……」
思わず感動の声を上げてしまう程に、バランスの取れた胸が現れた。
呼吸の僅かな上下でさえも柔らかく揺れ、鍛えられた胸筋の土台で仰向けに寝かせても砲弾の様な形は余り崩れない。
頂点に鎮座する乳首も濃いピンク色で、誰にも汚された事はなさそうだ。
本当はじっくりと嬲りたいが、時間が無い状況ではそれも叶わない。
次は短いスカートをサッと捲り上げ、ショーツを下ろしていく。
水着などに着替える以外で日に晒される事のない白い下腹部を過ぎ、恋人でもない異性に最も見られたくない秘所が姿を現した。
年相応に生え揃った陰毛は秘裂までには及ばず、恥骨周辺のみを覆っている。
足を開かせて覗き込むと、引っ張られた性器が少しだけ口を開けて膣口を晒していた。
当然の事ながら、弄ってもいない状況で愛液は漏れ出していない。
ここは魔法の出番だろう。
「『粘液紳士(ヌルリスト)』」
この魔法は名前の通り、粘度の高い液体を出す事を目的としている。
掌から出した粘液を久美の性器へ垂らした。
表面をゆっくりと流れる液体を指で絡め、全体へ塗り拡げていく。
かなりの柔らかさを持つ大陰唇を開き、発達した小陰唇も根元まで弄ぶ。
思えば転生する前を含めて、女性器に触ったのは初めてだった。
紛れも無い初体験に興奮を抑えきれず、少し下へ移動させた指を処女の膣口へ差し込んだ。
「んっ……」
微かに呻き声を上げた久美を横目に、処女膜を破らない程度に奥へ進める。
指に感じる胎内の暖かさを感じて、陰茎が硬さを増していく。
呼吸の度に蠢く膣壁は意識を失っている所為で拒否もしていなければ、受け入れ様ともしていなかった。
しかし、指位なら丁度良い圧迫感を感じる狭さだ。
窮屈さを訴えていた陰茎を開放し、残っていた粘液を塗りたくる。
これで愛液の分泌が無くても、多少はスムーズに入れられるだろう。
広げた足の間の腰を入れて、鈴口を膣内へ入れていく。
「んっ、ふぅ……」
亀頭の表面を柔らかく厚みのある小陰唇が滑り、それを過ぎれば狭い膣口が迎える。
指一本が丁度良い太さだったにも拘らず、粘液の力を借りて拡張していく
身体を犯す侵入者を受け入れても、気を失っている久美は多少眉を顰めた程度の反応しかない。
胸を曝け出され、処女を破られそうになっていても、眼を閉じて力無く四肢を投げ出す姿は興奮する物がある。
腰にグッと力を入れ、鈴口に感じていた処女膜を破り去った。
「ひぃぎっ!?」
いくら粘液の助けがあっても実質は準備の整っていない所を犯されたので、流石に苦痛の声が漏れてしまう。
それでも竿に感じる小陰唇を、大陰唇ごと巻き込みつつ押し込む。
ヒダの一枚一枚が敏感な亀頭とカリ、竿に走る太い血管の凹凸にまで張り付いている。
「ひっ、ひぅ、ぐぅ!」
到底入る余地も無いと思われた所を、力尽くで広げられるのは辛い様だ。
陰茎を根元まで差し込み終わる頃には、鈴口は子宮口へ到達した。
太さに関しては若干の苦痛を与えてしまっても、長さに関しては相性が良い。
異物を感じて浅く速い呼吸になった刺激は、違和感と苦痛でピクピクと痙攣する内股の動きと合わさり、胎内にもしっかりと届く。
それは強い締め付けの中にも、細かい振動の強弱となって快感を返してきた。
ただ自分の身体を傷つけない為だと理解していても、動き全てが快楽に繋がっている。
粘液を拭き取った手で巨乳を掴み、本格的に腰を動かし始める。
「ふっ、ぃぎっ!?」
残った僅かな処女膜も、こそぎ落とす勢いで早めのピストン運動を繰り返す。
勢い良く打ち付ける度に揉まれていない方の胸は大胆に揺れ、視覚的にも興奮を高めさせてくれた。
久美自身の興奮は僅かな物でも、反射的に固くなった乳首は掌で転がすだけでも気持ち良い。
真正面から掴んで揉み指の間から食み出る胸を楽しみ、横から揉んでは硬さの残る感触を感じる。
指の動きと合わせて、腰も動かしていく。
「ぅんっ、んっ、んっ、はぅ……」
淫核と比べれば鈍くはあるが性感帯の胸を思う存分揉まれ、子宮口をリズム良く突かれた久美は快感を溜め込んでいく。
興奮で胎内の熱は増し、愛液の分泌も増えてくる。
入り口付近のGスポット目掛け、小刻みに出し入れを繰り返せば、引く動きに合わせて甘い声が出てきた。
「はぁん、んふぅ、んあっ!」
痛みで歪んでいた表情は、快感を受けて蕩け出している。
締め付けるだけだった膣壁も、不器用ながら奥へと波打つ様な動きに変わっていた。
導かれるままに奥へ突き入れ、流れに逆らって引き抜く。
亀頭に限らず、陰茎全てを愛撫するヒダの1枚1枚が蠢いて快楽を与えてくる。
早く動いてもカリの凹みまで、しっかりと刺激してくる感覚は最高だ。
そして、駆け上がってくる絶頂に逆らう事無く、奥へ突き込んで精液を流し込む。
「んあっ!?」
「うっ!」
本能に従い、女に種付けする為に痙攣を繰り返す陰茎からは、深千夜の口に出した時よりも大量の精液が出される。
膣壁の奥へ引き込む動きは健在で、結果的に子宮へ精液を大量に降り掛ける事になった。
「んっ……、ん……」
中途半端に高まった久美の性感は、自分以外の熱い体液を身体の奥へ流し込まれても起きはしない。
犯した俺だけが満足する事になったが、処女を破られたばかりでここまでの快楽を感じるのなら次は絶頂へ持っていけそうだ。
最後に頭を抱え込んで、舌を絡めるキスをしてから身体を引き抜く。
一瞬、潰れる巨乳の感触でもう一度犯そうと思ってしまうが、機会はこれからも沢山在ると自分へ言い聞かせる。
「んぁ……」
絶頂間際で寸止めされた所為で久美の身体は、僅かな動きでさえも敏感に感じ取る。
蟹股にされた足の間からは、無残に開かれた膣口が姿を晒し、薄いピンク入りをした白濁液を垂れ流し始めた。
栓の役割をしていた陰茎の形よりも小さく、呼吸をする度に大きさを変えている。
そろそろ愛花達が戻って来ても良い頃合なので、後始末に取り掛かった。
潤滑油代わりに使った『粘液紳士(ヌルリスト)』は、魔法を解けば跡も残さず消えるので、拭くのは漏れ出た精液と愛液だけ。
股間を綺麗にする際は何の問題も無かったが、興奮で若干大きさを増した胸をブラに仕舞う事に手間取る。
一度出したお陰で冷静なまま、作業が出来ていた事は幸いだ。
それでも乳首を指の側面で摘んだり、転がしたりしてしまうのは仕方が無いだろう。
服を戻した後、念の為にもう一度確認をしてから全ての魔法を解く。
「――、あれっ?」
「あっ、気が付いた」
「……どうしたの?」
意識を失っていたのは、あくまで俺の魔法の効果なので解けば元に戻る。
自分が気を失っていた事など知りもしない久美は、いつの間にか横になっている事に疑問を感じた。
「私……、何で寝てるの?」
「突然気を失ったんだよ」
「えっ、そうなの?」
「あぁ、それで柊達は保健室へ教師を呼びに行ってるよ」
そう聞いた久美は、もしもの時は自分が守ると気合を入れていたので顔を曇らせた。
寝ていても仕方がないと立ち上がったが、直ぐに腰を押さえて唸る。
「うぅ~、何か腰がだるい……」
「……怪奇現象か?」
散々、陰茎を突き入れられた所為だとは夢にも思うまい。
何度か腰を叩いて円を描く様に回し、背筋を伸ばして身体を確認する久美。
手を握ったり身体を見下ろしたりしても異常がないので安心した様だ。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「はぁはぁ、先生、こっちです!」
とりあえず、保健室にでも行こうかと言う前に愛花達が到着した。
相当急いだのだろうか、荒々しく息を切らせている。
「はぁ、く、久美~!」
「おっと、心配掛けて御免ね」
「心配したよ」
抱き付いて来る愛花を受け止めて、頭を撫でていた久美へ深千夜の言葉が掛けられる。
その表情は明らかに自分の責任を感じていそうな険しい物となっていた。
「ごめん久美、私が――」
「ストップ! 私も納得して付いて来たんだから謝るのは無し!」
「久美……」
「それに気を失っただけで、何とも無いからね」
「……そうなの?」
「うん、むしろ睡眠が取れて体調もちょっと良いよ」
どうやら深千夜の事を考えて、腰のダルさは言わない事にした様だ。
俺にも顔を向けて、言わない様に目で訴えかけてくる。
異論は勿論無いので、素直に頷いた。
愛花達の会話が途切れる頃、急いで走ってきたのに放置されてしまっていた保険医が声を掛けてくる。
「あぁ、一応保健室で診察でもしていくかね?」
「別に良いですよ、何ともありませんし」
「ちゃんと検査して貰った方が良いよ」
「そうだよ、久美、自分では分からない事も在るし」
「そんなに専門的な検査は出来んがね、一通り軽く調べて終わりだから来なさい」
「う~ん、分かりました」
しぶしぶ付いて行く久美を囲んで、皆で保健室に行く事になった。
検査は普通の身体的な検査から、魔法を使った検査まで一通り行われる。
久美に掛けた魔法は後に残らない物ばかりなので、何も異変は出てこない。
身体の中に魔力の反応があるかも知れないが、ここは魔法を使う授業がある為に怪しまれる事はないだろう。
胎内に少量の精液も残っていようとも、そこまではいくら保険医だとて調べはしない。
結果、やはり何も以上は無いと判断された久美は開放される。
健康なのに検査を受けて若干グッタリした久美達と共に保健室から出ると、愛花の父である柊先生と校長が立っていた。
「お前達、最近噂になっている怪奇スポットで何かあったようだな」
「少し話を聞きたいので、校長室へ来てください」
思わぬ形で登場した人物に固まってしまっていた俺達は、校長室へ連行された。
そこから、やれどうして行っただの、やれ何かあったらどうするだの説教染みた尋問を受ける。
愛花達は単に興味本位の怖い物見たさだと説明をした。
始めは何か隠しているのかと厳しい目を向けて来られたが、事実だろうと分かったらしく追及の手は消える。
一安心した所へ、今度は俺へと話が振られた。
「で、お前は愛花達が保健室へ行っている時に何か見たか?」
「いえ、三国を見ても普通に呼吸をしているだけで、周りを警戒しても何も変わらない景色が広がっているだけでした」
「……本当か?」
「嘘を付いてどうするんですか」
「……それもそうか」
実際は嘘だが、校長達は何気に俺との付き合いは長い。
いままでエロの為とはいえ、それを隠して魔法を必死に勉強する姿を見ている所為か簡単に信じた。
やはり外面の良さは、持っておく物だ。
「……柊先生、やはりあの区域はしばらくの間は立ち入り禁止にしましょうか」
「そうですね、確認出来る異変がありましたし」
「明日の職員会議で決まれば、全校生徒にも通達しましょう」
「分かりました」
結局、俺の実験場は立ち入り禁止が決定してしまった。
しかし、ある程度の魔法は使用済みである上に呪文もメモしてある。
少なくとも性欲発散に困る事は無いだろう。
「お前達は、もう帰って良いぞ」
「は~い」
教室へ荷物を取りに帰る道すがら、何故か俺の判断が賞賛された。
「でも、あの時は格好良かったよ!」
「俺?」
「うん、倒れる久美を支えて『早く保健室へ呼びに行ってくれ』って」
「そういえば、お礼がまだだったね、有難う」
「いや、今思えば俺が背負って保健室へ行けば良かったから、礼を言われるのは恥ずかしいよ」
むしろ処女をくれた事に対して礼を言わなければならない。
「私惚れちゃいそうだった」
「……わざとらしい」
「ばれた?」
「もう、ミッチョンたら!」
流れに乗った深千夜を見れば、いつもの仲良し3人組の雰囲気が戻っていた。
どうやら、もうギクシャクする事はない様だ。
むしろ前より仲が良くなった気がしないでもない。
その後も良い感じで会話をしながら、それぞれの帰り道へ分かれる。
家に帰って何事も無く、出された宿題を消化して就寝。
次の日は朝礼で正式に、昨日言われていた区画への立ち入り禁止が全校生徒に通達された。
原因に付いて俺がやった事や、やらなかった事が噂として話題に上がるのは仕方が無いだろう。
そんな、ある意味浮かれた空気が漂う中で迎えた昼休み、持っていたカードに見覚えのある顔が転送されたと思ったら学校中に爆音が轟いた。
野次馬根性が発揮された生徒達の流れに乗って音の出所へ行くと、そこにはゴールドプレートを持つ<九澄 大賀>の姿。
そう、『M×0』の主人公だ。
割りと平和に過ごせていたが、いよいよ波乱万丈の、それこそ少年誌の様な生活がやってくる。
主人公の傍に居れば良くも悪くも注目を集めるだろうから、今まで以上に魔法の腕を上達させて使い時を見極めないといけない。
そして付かず離れず、合間を縫って美味しい所を持っていく事を心掛けよう。
今後の行動についてある程度の道筋を立てた俺は、背景のモブキャラに成り切って現場を離れた。
午後の授業で転校生として紹介された、九澄の座る無意味に豪華な椅子に少しばかり唖然としてしまう。
これで世界は原作の流れへと入って行った。
続く
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